第299話

彼女がいない部屋は、静かすぎた。

ミラには帰ってくれと頼んだ。休みたいんだ、と。言葉はぶっきらぼうで、抑制がきいていた。内側がぐらぐらに揺れているときほど、平静を装って話す――いつもの癖だ。

ミラはためらい、それでも出ていった。背後で扉がかすかに鳴る。その音はどんな刃より鋭く胸に刺さった。

これでいいのだ、と自分に言い聞かせた。彼女には、半分壊れた人間に縛られない人生がふさわしい。もう二度と、彼女が望むように抱きしめてやれないかもしれない男になど。いま突き放したほうがいい。何年も、俺がもがくのを見て無駄にするよりは。

それでも、空の椅子を見つめて横たわるうち、胸の重みは息をするたび増し...

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